第3回吃音勉強会「音響音声学から見た吃音」

【報告】

 今日の内容は、「音響音声学から見た吃音」というものでした。資料は、去年大学で受けた「音響音声学」のレジュメやノート、教科書を元に作成しました。全くの専門外でしたが、個人的に一度復習したいと考えていた内容だったので、楽しく資料を作成できました。

 「音響学的に吃音を考察する」という科学的な姿勢は、前回担当した「吃音を当事者研究する」という現象学的態度とは、ある意味正反対の姿勢だと思います。もちろん、音響学的分析は吃音研究に大きな成果をもたらしていますが、僕自身は、「吃音についてのアプローチを紹介する」というよりは、「音(声)を科学することの面白さを紹介したい」という思いで資料を作成しました。そういった事情や時間的切迫などから、第3部の「音響学的に吃音を研究する」の内容が、少し手薄になってしまった感があり、吃音勉強会としては少し不十分な点もあったと、反省しております。次回からは、内容と時間の配分を、気をつけようと思いました。

 次回の「バリアフリー・コンフリクト」は、今回とは正反対で、わかりにくい数式や物理的知識は全く必要ありません。タイトルこそ一見とっつきにくいかもしれませんが、とても面白い内容です。ぜひご参加ください。

(山田)

 

【感想】 

 「音響音声学から見た吃音」ということで、なにやら難しそうで話についていけるか不安でしたが、比較的卑近な例を挙げての説明もあり感覚的に理解しやすい講義でした。

 個人的には、人間の発声が再現できる声道実体模型というのが興味深かったです。これがもう少し進化して普及すれば、電話応対などはこれにやらせればいいかな?なんて思いました。

 またあらゆる発声は基本周波数をはじめとするいくつかの波形の合成で説明がつくというのも面白いですね!昨今ボーカロイドが普及していますが、これを応用すればキーボードをたたくだけで人間らしい自然な語り口で言葉がPCのスピーカーから発声される、といったことも可能になるでしょう。吃音があるなら、無理して話さなくてもよい時代が訪れるかもしれませんね。

 後半はフリーソフトを用いた音声分析の実演ということでした。実際の発声から波形を分解し展開するということでしたが、かなり難しく理解できませんでした。吃音症状発生時の音声分析によると、正常な波形の前段階に無声音や不自然な波形が確認できるとのことで、これが発声訓練を一定程度施した結果、消滅するという実験データがあるそうです。いわゆるビフォーアフターですが、個人的にはそこに至るプロセスを詳しく見てみたいと思いました。

 いずれにせよ、まだ臨床での実験段階だと思うので、より多くの吃音者が実験に参加することが吃音メカニズムの解析と医療的進歩に貢献しうるのだという認識を新たにしました。山田さん、ありがとうございました。


(松村)