第10回吃音勉強会「吃音の研究あれこれ ―音声の分析と支援機器を中心に―」


【報告】

 流暢性が促進される条件と支援機器というテーマで勉強会を実施しました。
 吃音の研究に触れられる文献の紹介の後、吃音の症状と二次的な行動について触れ、吃音とは何かをまず復習しました。その後、吃音が生じにくくなる条件として、発話に向ける注意をそらすことを挙げました。話し方をいつもと変える、動作を加える、機械などで自分の声の聞こえ方を変えるなどです。
 後半は、それによって流暢性を促進する取り組み、支援機器について紹介しました。
 それらの効果が限定的なのか、それともあるのかも含めて検討しました。


(越智)

【感想】

 今日は「吃音の研究あれこれ」と銘打ち、10月に行われた直接法の基礎知識をふまえつつ、それをさらに深化させた内容を学びました。

 具体的には、エビデンスとなっている直接法によるさまざまな吃音改善法と、その結果について学習しました。

 随伴運動やそれに類するさまざまな特異な話し方を体得するやり方に関しては、一時的な効果は見られるものの、やはり馴化すると症状が戻ってしまうということでした。DAFなどの器具を用いた場合、効果があった人に関しては、普段もそれを用いることで電話など日常的な活動にも充分たえうる成果が見られたということですが、外すと一定の持続性しかなく、戻ってしまうということでした。

 しかし、軟起声や意図的な伸発などを用い、徐々に普通の話し方に持っていくやり方に関しては、持続的効果がみられ、リバウンドはあるにせよ元の症状に戻ることはない、という結論が出たということでした。

 そこで実践として、自分の声が軟起声か硬起声かを特定するソフトを用い、軟起声に近づけるということを行いました。ただやはり即席には難しく、参加者一様に完全に軟起声の枠に入る発声を体得した方はいませんでした。

 軟起声については現在、吃音外来のある病院ではほぼどこでも体感でき、それを用いた吃音改善の臨床も進んでいるということでした。県内では所沢市の国立障害者リハビリテーションセンター、近県では相模原市の北里大学東病院が紹介されたほか、9月2日から4日まで開催される第4回日本吃音・流暢性学会における臨床セミナーの中でも実施されるということでした。吃音当事者であれば学会員でなくても参加できるということですので、これを期にぜひ体験してみてはいかがでしょうか・・・

 完癒しないことをもって直接法を否定することは簡単ですが、日々症状に苦しみ、藁をもすがる想いで改善に取り組む吃音者が後を絶たない以上、これをすべて悪とし、やめてしまえと喧伝することはあまりにも理不尽であり、当事者意識を逆撫でする愚行に他ならないとの想いを新たにしました。越智さん、ありがとうございました。

(Web担当 松村)